CHALLENGES

ザイマックスデジタルの挑戦

02

からくさホテルの
客室清掃現場

情報のデジタル化と数理最適化を用いて、
ホテル客室清掃現場の課題を解決する。

  • 2008年入社
    情報システム部 シニアマネジャー
    2008年入社
    情報システム部
    シニアマネジャー

    市村

    市村 市村
  • 2020年入社
    デジタルイノベーション部
    2020年入社
    デジタルイノベーション部
     

    濱口

    濱口 濱口
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プロジェクト概要

  • 背景

  • 観光客向け宿泊特化型のホテルである「からくさホテル」は、インバウンド向けのニーズに対応した客室づくりが特徴。ザイマックスグループではこのホテル運営だけでなく、客室清掃も自社で担っており、重要なインフラとなっている。人手不足化が進む中、効率的かつ柔軟に対応していくためには課題が多く、そんなホテル事業にデジタル目線で入り込み、新たな仕組みづくりに挑む。

からくさホテル
市村

今回の取り組みを
始めたきっかけを
教えてください。

市村 元々、僕はホテル事業の全体をデジタル観点で見ていて、事業部門の担当役員や部長、担当者とは「ホテル事業」について色々な観点で日々話をしていました。どんな課題があって、それに対してデジタルでできるアプローチはあるのか。その中で、札幌のからくさホテルにおいて、チェックイン開始時間になっても客室清掃が完了していないという事象が発生していて、一緒にこの問題の解決にあたってもらえないかという話になったのが、この取り組みの始まりでした。

市村

濱口 東京のホテルでも似たような話があり、数理最適化という計算技術を用いて課題解決や業務効率化ができないかと考えていたのですが、知恵を出し合った方が良いのではということで、一緒に取り組むことになりました。

具体的には
どのようなことに
取り組まれましたか?

市村 まず第一に現場を詳しく見ることから始めました。というのも、当初は人手不足の問題では?という話もあったのですが、そんな単純な話なのかということで、課題を正しく認識するため、実際にホテルの現場に行ったり、ヒアリングをしたりしました。すると、清掃現場全体のプロセスに問題があって、その問題の多くは「コントローラー」と呼ばれる現場監督者の業務に集中していることがわかりました。コントローラーは清掃指示、清掃スタッフのアサイン、清掃完了のチェックという三つの重要な業務を担っているのですが、どれも煩雑で、属人的な業務が多かったんです。だから現場を効率的に管理できておらず、これがこの課題の本質的な部分だったんですよね。

濱口

濱口 「現場の課題をデジタルで解決する」というと、一見シンプルに見えるかもしれないのですが、課題の本質がどこにあるのかがわからないと意味が無くて。現場で働いている人たちは課題感を持っている物事があっても、何をどうデジタル化できるかイメージできないことが多い。一方我々デジタル領域で仕事をしている人間は、オフィスで考えているだけでは現場のリアルな課題が見えてこないんです。

濱口

市村 そうそう、だからまず僕たちが現場を知らなくてはいけない。現場を知ることで問題がどこにあるかがわかったので、コントローラーを1つのホテルに張り付かせるのをやめ、無理やり現場から引きはがしてみました。そうするとその過程で、新たに見えてくることが色々あって。清掃指示、清掃スタッフのアサイン、清掃完了のチェックというコントローラーの三つの重要な業務にも、それぞれ課題がありました。

濱口 具体的な課題が見えてくれば、デジタル化による課題解決の道筋も見えてきます。
まず「清掃指示」についてです。ホテルからコントローラーに対して、ホテルの予約状況に応じた清掃指示書が提出され、それをもとにコントローラーは清掃スタッフに具体的な清掃内容を指示しますが、清掃指示書には、清掃スタッフが見てわかる具体的な指示には落とし込まれていませんでした。そのため、コントローラーがそれに手書きで一つひとつ加筆をしている状況で、ここに大きな課題があると考えました。 ホテルから提出される清掃指示書の内容を自動で整理し、具体的な指示に変換する機能を持たせた「デジタル清掃指示書」を実装し、これにより全体の約8割の業務の情報整理の自動化に成功しました。

市村 2つ目の「清掃スタッフのアサイン」については、各部屋の清掃仕様および必要清掃時間と、当日出社する清掃スタッフとそのスキルなどを把握してアサインする必要があり、一定のスキルを要する属人的な業務になっていたことが課題でした。

濱口 この課題では「数理最適化を用いたアサインツール」を自社内で作成することで対応しました。ただこれは、いわゆる「暗黙のルール」をどこまで明確にできるかが勝負で…。非常に難しかったんですが、現場へのヒアリングに基づいてプロトタイプを作成し、それを検証することを繰り返しながら、モデルに必要な条件を少しずつ組み込んでいきました。ただ、ルールが多くなりすぎるとその分計算量が多くなり、実用的な時間で解が出ないという問題もでてきたので、制約条件を如何にシンプルに網羅できるかも勉強しながら対応しました。

市村 3つ目の「清掃完了のチェック」ですが、これはコントローラーは各フロアを巡回して状況を確認しつつ、その間にホテルから入ってくる変更などを調整しながら、清掃が完了した部屋については最終チェックを行い、その全てをチェックイン時間である15時までに終わらせなければいけないという過酷な業務でした。実は清掃自体は終わっていたものの、コントローラーのチェックが遅れていたため、15時に間に合っていないケースなども判明したんですよね。

濱口 これについては清掃スタッフそれぞれにスマートフォンを支給し、各部屋の清掃開始、終了をデジタルで申請するやり方にしたことで、清掃状況がリアルタイムで把握することができかつ、調整もスムーズに行いやすくなりました。

事業に入り込んで
一緒に取り組むことの
面白さややりがいは
何でしょうか。

市村 現場では実際どんな働き方をしているのか、見に行ったりヒアリングをしなければ見えてこなかった課題がたくさんありました。現場を見たからこそ、課題解決においても試行錯誤しながら向き合っていけたんだと思います。事業部門とともにまずは課題を発見して整理するところから、そして自分たちで手を動かして仕組みを作りながら「事業」の課題解決を推進できるのは、事業とデジタルが近い当社ならではの強みだと思いますし、非常にやりがいを感じますね。

濱口 ホテルの運営方法や業務プロセス自体を刷新していく役割までも担っているというのが当社のおもしろいところです。今回の事例も、実は「完成」にまでたどり着いていなくて。現場の状況に応じてまだまだ試行錯誤している部分や、変化していく部分もあるんです。「作って終わり」ではなく、こうやって事業側と一体となって取り組んでいけるのが醍醐味だと思いますね。

市村 濱口 市村 濱口