CHALLENGES
ザイマックスデジタルの挑戦
03IoTセンサーを用いた
看板監視サービス
事業の課題解決のために
センサー開発に挑み、
独自のサービスを創る。
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2008年入社
情報システム部 ITインフラグループ シニアマネジャー 2008年入社
情報システム部
ITインフラグループ
シニアマネジャー横山
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2009年入社
デジタルイノベーション部 マネジャー 2009年入社
デジタルイノベーション部
マネジャー
石原
プロジェクト概要
背景
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センサーを対象の看板に設置し、看板の状態を常時監視することで、目視・触診点検では感知できない経年での微細な変化、さらには台風・地震などの災害時における急激な変化を指標化し、看板の管理に活用する。ザイマックスは、この根幹となるセンサーや分析手法を自ら開発し、看板監視サービスとして展開する。

このサービスを
始めたキッカケは?
横山 2015年に札幌市で看板落下による傷害事故が発生して、社内掲示板で、「高所に設置された看板は日常的には目視でしか点検がむずかしく、良い管理方法はないか?」という話題を目にして。「看板にセンサーを取り付けて状態を把握できるのでは」と投稿したことがキッカケです。ただ、センサー探しから始めたものの、市場に欲しい製品はまだなくて。だから、自分で開発しないといけないと考えていました。

石原 当時、私はザイマックス不動産総合研究所にいて、データ分析の役割でアサインされましたが、不動産運営管理会社のザイマックスがセンサを開発するんだって、驚きました。
横山 私も情報システム部でセンサの開発を経験するなんて想像もしていませんでした。とにかく、いろんなセンサメーカーや商社に片っ端から電話をかけて話を聞いて回っていたら、「うちでセンサーを開発できるかもしれない。」とセンサメーカーの研究開発部の方が熱意を持って話を聞いてくださって、共同開発が始まりました。開発にあたって、まずは試作機を製作して、ちゃんと「傾き」と「揺れ」のデータが取得できるかどうかを検証。計測データを機器内に一定期間記録しておき、スマートフォンのBluetooth通信で収集するという方式でスタートしました。
石原 懐かしいですね、データ収集を僕も行いましたが、想定外のトラブルが多発しましたよね。「センサを設置するにも、外観上や法令の制限で看板内部にセンサを設置しないといけない」、「大雨で看板内部に水がたまってセンサーが水没する」、「看板の材質の影響や、Bluetooth通信が安定せず看板下の歩道で1時間以上データ取得に格闘した」とか。
横山 ひとつひとつ、メーカーの方々と改善方法を探りながら懸命に検証を進めました。こういった経験を踏まえ、通信やバッテリー、センサーの形状・サイズ・防水防塵性など、約2年間の実証実験で得られた知見や成果を入れ込んだ仕様がようやく決定し、その半年後に、量産機が納品されました。これがゴールではなかったんですが、完成した製品が実際に取り付けられたのを目の当たりにしたときは、大きな達成感を感じました。

センサー完成後、
サービス化に
向けての課題は?
石原 データをどう活用するか、ですかね。外れ値を検出する「異常検知」という分析手法が有効ではないかと考えたものの、当然ですが、基本的には何も起きない、変化のないデータでした。そこで、大事にしたことが、看板の事故を予測するのではなく、予防保全のサービスだということ。これまでと看板の状態(傾き、揺れ)が違うと気づいたら、まず点検する、ビルメンテナンスで行う設備の維持管理の考えを参考にしていました。

横山 多くのお客様からは、看板が落下・倒壊する事故の直前の状況を知りたいと言われてました。でも看板のサイズや素材、設置している高さや設置方法など、条件が違うからデータに共通性はなく。また事故が起きる直前のデータを集められるわけでもなく。当時、ビッグデータというワードも流行っていたこともあって、データが自動で取得できれば、そういうことも可能だろうと思われてたんですよね。
石原
だからこそ、「これまでとの違い」を指標化することが重要だったんです。何か違う動きが出たら、アラートを出して、現場に駆け付け点検する。事前に対策ができることで、安心・安全な維持管理につながると考えました。
ただ、いざデータを分析しはじめると、一日の中でも対象物の角度に変化があることに驚きました。この変化は、最終的に気温による膨張・収縮の影響であると結論付けられましたが、その過程では同じ看板に複数のセンサーを設置したり、センサー自体の誤差を把握する実験をしたりと、いろんな検証を繰り返しました。こうして得られた結果をプロジェクトメンバーと共有し、改善を繰り返し行いました。
横山
そうやっていろんな検証をしていた中、2018年に大型台風が関西を直撃したんです。弊社グループで運営しているからくさホテルの看板が大きく揺れる動画をホテルスタッフが撮影していて。その後、目視で点検してみても違いはわからず。
ただ、センサを設置していたから、データで台風通過前後の比較ができて、明らかに異常がわかりました。そのデータをもとに、看板の撤去費用を損害保険契約の保険費でまかなうことができました。保険会社に、台風の影響だと論拠を示せたんですよね。
石原 その経験を元に、経年劣化などで徐々に変化する中長期指標と、台風や地震などの災害時などでの急激な変化を予測する短期指標の2つに分けて整理しました。中長期指標では角度変化の傾向に着目して、その変化量をスコア化し、短期指標では機械学習による異常検知アルゴリズムを実装しました。2つの指標を作成して、実際にアラートが出た看板は点検して、点検結果を基に、さらに各種パラメーターの調整を行う。これらを繰り返して、ようやく今のサービスの形に至りましたね。
サービス化までの
道のりを振り返って
横山 これまでは情報システム部としてインフラ担当をしてきた自分が、現場の課題を聞きつけ、その解決に一から入り込んで、しかもセンサの開発までするなんて。思ってもいない経験ができたことは自分の強みにもなりました。
石原 「分析」の真価は、事業の正しい意思決定にどれだけ貢献できるかだと考えています。そのため、分析手法の正確性はもちろん重要ですが、意思決定者にとって結果がわかりやすく、活用しやすいものであることも欠かせません。プロジェクトメンバーやお客様と本当に多くのやり取りを通じて、大きな気付きと学びを得ることができましたね。

